学齢期から考える子どものキャリア観:多様な経験を積むサポートの視点
学齢期から考える子どものキャリア観:多様な経験を積むサポートの視点
学齢期は、子どもたちの世界が学校生活を中心に大きく広がる時期です。学習内容が深まり、友達との関係性も複雑になり、様々な活動に触れる中で、将来への漠然とした興味や関心が芽生え始めることもあります。この大切な時期に、親として子どもたちのキャリア観の芽をどのように育み、多様な可能性に目を向けさせていくことができるのか、経験に基づいた視点から考えてみたいと思います。
なぜ学齢期からキャリア観を考えることが重要なのか
「キャリア教育」と聞くと、進路選択が目前に迫った中高生向けのイメージを持つかもしれません。しかし、近年では、より早期からのキャリア教育の重要性が指摘されています。これは、単に将来就く職業を決めるということだけを指すのではなく、子どもたちが社会との関わりの中で、自分の興味や得意なこと、価値観を理解し、人生を主体的に切り拓いていく力を育むプロセス全体を意味しています。
学齢期の子どもたちは、まだ具体的な職業をイメージすることは難しくても、身の回りの大人や社会の出来事から様々な影響を受けています。この時期に、多様な働き方や生き方があること、そして自分の「好き」や「得意」が将来に繋がりうることを知る機会を提供することは、彼らの視野を広げ、学びへの意欲や自己肯定感を育む上で大きな意味を持ちます。
経験豊富な親御さんであれば、ご自身のこれまでのキャリア選択や働き方の中で、様々な葛藤や学びがあったことと思います。そうした経験を踏まえ、お子様が将来「何をしたいか」だけでなく、「どのように社会と関わっていきたいか」「どんな価値観を大切にしたいか」といった広い視点を持てるようにサポートすることは、学齢期だからこそ可能な関わり方と言えるでしょう。
学齢期の子どものキャリア観を育む具体的なサポート
では、具体的に家庭でどのようなサポートができるでしょうか。
-
子どもの「好き」や興味を深掘りする声かけ: 子どもが何かに強い興味を示したら、「どうしてそれが面白いの?」「もっと知りたいことはある?」など、彼らの内側にある探究心を引き出すような声かけをしてみましょう。単に情報を与えるだけでなく、子ども自身が考えるきっかけを作ることが大切です。例えば、生き物が好きなら図鑑を一緒に見たり、関連する場所を訪れたり、絵を描くのが好きなら様々な画材に触れさせたりするなど、興味をさらに広げる手助けをします。
-
多様な職業や生き方に触れる機会の提供: 世の中には本当にたくさんの仕事があり、様々な働き方や生き方があります。テレビ番組や書籍、インターネットなどを通じて、普段接する機会のない職業や、ユニークな活動をしている人々の存在を紹介することができます。また、家族や親戚、知人など、身近な大人がどんな仕事をしているのか、どんな思いで働いているのかを聞く機会を作ることも有効です。特別なことでなくとも、例えばパン屋さん、図書館の司書さん、建設現場で働く人など、身の回りの人々の働く姿に触れるだけでも、子どもにとっては大きな学びとなります。
-
親自身の仕事や経験を話す: 親御さんがどのような仕事をしているのか、その仕事を選んだ理由、仕事の楽しいところや大変なところなどを、子どもの理解できる言葉で話してみることも大切です。これは、親の働く姿を見せるだけでなく、働くことの価値や、社会との繋がりについて子どもが考えるきっかけになります。ただし、特定の職業を推奨したり、親の価値観を一方的に押し付けたりすることにならないよう注意が必要です。自身のキャリアにおける失敗談やそこから学んだことなども含めて話すことで、子どもはキャリアパスが常に直線的なものではないことを理解し、将来への不安を軽減できるかもしれません。
-
様々な経験を積ませる: 習い事、地域のボランティア活動、職場体験(可能であれば)、夏休み中の特定のプロジェクトなど、学校の勉強だけでは得られない多様な経験は、子ども自身の新たな興味や得意を発見する宝庫です。これらの経験を通じて、子どもは様々な人と関わる力、課題解決能力、そして何より「自分は何が好きで、何が得意か」を知る手がかりを得ることができます。結果に固執せず、経験そのものの価値を大切にする姿勢が親には求められます。
経験を共有し、共に考える場として
学齢期の子どもたちのキャリア観育成は、親御さん自身の経験が最も活かされる分野の一つかもしれません。ご自身がどのように進路を選び、どのような仕事に就き、働き方を変えてきたのか。その中で感じた喜びや後悔、学びは、まさに生きた教材となります。
もちろん、時代は変化しており、親世代の経験がそのまま子どもの将来に当てはまるわけではありません。しかし、変化に対応するためにどのように考え、行動してきたのか、失敗からどのように立ち直ったのかといったプロセスを共有することは、子どもが将来、予期せぬ出来事に直面した際に役立つ心の土台となります。
他のご家庭では、学齢期のお子様に対してどのような声かけをされているでしょうか。どのような機会を提供されているでしょうか。あるいは、ご自身のこれまでの経験を、お子様にどのように伝えていますか。正解は一つではなく、それぞれの家庭、そして子ども一人ひとりに合った関わり方があるはずです。この広場で、皆様の貴重な経験や考えを共有し合うことは、私たち親自身にとっても新たな発見や学びとなることでしょう。