学齢期の子どもの「飽きっぽい」との付き合い方:多様な興味関心を力に変える親の視点
学齢期の子どもの「飽きっぽい」特性とどう向き合うか
学齢期に入ると、子どもたちは様々なことに興味を持ち始めます。同時に、一つのことに長く集中せず、すぐに次のものへ移る、いわゆる「飽きっぽい」と感じる振る舞いが見られることもあるかもしれません。一つのことをじっくり深めてほしいと願う親御さんにとっては、少々気がかりなことかもしれません。この「飽きっぽい」という特性は、子どもの成長においてどのように捉えるべきなのでしょうか。そして、親はどのように寄り添うことができるのでしょうか。
この時期の子どもの「飽きっぽい」という傾向は、必ずしもネガティブなものばかりではありません。それは、まだ見ぬ世界に対する旺盛な好奇心や、多様な可能性を探求したいという自然な欲求の表れであるとも考えられます。現代は情報過多な時代であり、子どもたちの周囲には様々な刺激や情報が溢れています。その中で、多くのことに触れ、自分にとって何が面白いのか、何が興味を引くのかを探るプロセスは、自己理解を深める上で重要なステップとなり得ます。
経験豊富な親御さんの中には、かつて子どもが「飽きてやめた」と思った習い事や活動で得た知識や経験が、後になって意外な形で役立っているのを目にした方もいらっしゃるかもしれません。幼い頃に広く浅く様々な経験を積むことは、将来思わぬところで点と点が繋がり、より深い学びや創造性に繋がる可能性を秘めているのです。
多様な興味関心を子どもの力に変える視点
子どもの多様な興味関心を「飽きっぽい」と否定的に捉えるのではなく、それを肯定的な力に変えていくためには、親の視点が重要になります。
まず、お子さんの「飽きた」というサインを、次の探求への準備期間と捉え直してみてはいかがでしょうか。興味の対象が変わること自体を責めるのではなく、なぜ興味を持ったのか、どこに面白さを感じたのか、そしてなぜ今は別のものに関心が向いているのか、といったお子さんの内面にある動機に静かに耳を傾けることから始めてみましょう。
次に、量から質への転換を意識的に促す機会を探ってみます。例えば、ある特定の昆虫に興味を持ったら、ただ図鑑を見るだけでなく、その昆虫が生息する環境について調べたり、関連するドキュメンタリーを見たり、実際に公園で探してみたりと、少しだけ踏み込んだ関わりを提案することができます。これにより、表面的な情報だけでなく、物事の背景にある繋がりや深さを学ぶきっかけが生まれます。
また、結果としての「成果」よりも、プロセスそのものを評価することを大切にしたいものです。新しいことに挑戦する楽しさ、試行錯誤する過程、うまくいかなかったときにどうするか、といった経験は、子どもの非認知能力や問題解決能力を育む上で非常に価値があります。「最後までやり遂げること」も大切ですが、あらゆることにそれを求めすぎると、せっかくの好奇心の芽を摘んでしまう可能性もあります。「この経験からどんなことを学んだかな?」のように、学びのプロセスに焦点を当てる対話は、お子さんにとって次に繋がる気づきを与えてくれるでしょう。
親ができる具体的な関わり方と共感の示唆
学齢期のお子さんの多様な興味関心に寄り添うために、親ができる具体的な関わり方をいくつかご紹介します。
- 否定せず、受け止める: 「また別のことに興味が移ったのね」と、まずはその変化を受け止めます。「どんなところが面白そう?」「前の〇〇はどんなところが難しかった(面白くなくなった)?」のように、理由や感情を聞いてみることで、お子さん自身も自分の興味の対象や理由を言語化する練習になります。
- 深掘りを促す問いかけ: 興味を持ったことについて、お子さんの言葉を待つだけでなく、「それはどうしてだと思う?」「もし〇〇だったらどうなるかな?」など、思考を刺激するような開かれた質問を投げかけてみます。
- 関連情報や体験を提供する: お子さんの興味に合わせた本を図書館で借りてきたり、関連する展示会やワークショップを調べてみたりするなど、さりげなく次のステップへのヒントを提供します。
- 「やめ時」を一緒に考える: 「続けることで得られるもの」と「新しいことに挑戦するために必要な区切り」について、お子さんと一緒に話し合ってみることも有効です。全てを途中で投げ出すのは考えものですが、全てのことに固執する必要もありません。
- 親自身も多様な興味を持つ姿勢を示す: 親が色々なことに興味を持ち、学び続ける姿勢を見せることは、お子さんにとって大きな学びとなります。
私たち親自身も、子育てを通して多くの壁に直面し、様々な選択をしてきました。お子さんの「飽きっぽい」という特性に触れるとき、私たち自身の幼少期や学齢期を振り返り、自分がどのように興味を広げ、あるいは深めてきたのかを思い返す機会にもなるかもしれません。自分自身の経験と照らし合わせながら、お子さんの多様な興味関心に寄り添うことは、親自身の価値観を見つめ直し、成長するきっかけともなるのではないでしょうか。
他のご家庭では、お子さんの多様な興味関心にどのように関わっていらっしゃるでしょうか。一つのことを深く追求することの価値、様々なことに触れることの価値、どちらも大切にしながら、お子さんにとって最善の道を見つけるためのヒントは、他の親御さんの経験の中にもきっとあるはずです。ぜひ、様々な視点に触れてみてください。