学齢期の子どもの自己肯定感:親の経験を活かしたサポートの視点
学齢期における自己肯定感の育み方を考える
子どもの成長に伴い、私たち親の関わり方も変化していきます。特に学齢期に入ると、子どもは家庭の外の世界と深く関わるようになり、そこでの経験が自己肯定感の形成に大きな影響を与えます。この時期の子どもの自己肯定感は、学習の成果、友達との関係、得意なことや苦手なことなど、様々な要因によって揺れ動くことがあります。
幼少期の子育てを経験されてきた多くの親御さんは、すでに様々な場面でお子さんと向き合い、その成長を見守ってこられました。その中で培われた経験は、学齢期の子どもの自己肯定感をサポートする上で非常に価値のあるものとなります。この時期に、親はどのように子どもに寄り添い、その自己肯定感を育むことができるのか、経験豊富な親だからこそできるサポートの視点について考えてみたいと思います。
学齢期の自己肯定感を取り巻く環境
学齢期の子どもは、学校での評価、友達との比較、習い事での上達度など、他者との関わりや社会的な基準の中で自分自身を捉える機会が増えます。これにより、自分の強みや弱みをより意識するようになります。
一方で、この時期は失敗や挫折を経験することも避けられません。期待通りの結果が出なかったり、友達との関係で悩んだりすることもあるでしょう。こうした経験を通して、子どもは自分自身の限界や課題に直面し、自己肯定感が一時的に低下することもあります。
親の「経験」が活かせるサポートの視点
経験豊富な親御さんは、これまでの子育てを通して、子ども一人ひとりの特性や成長のペースが異なることを肌で感じていらっしゃるかと思います。また、ご自身も様々な子育ての悩みや課題を乗り越えてこられたことでしょう。こうした経験は、学齢期の子どもの自己肯定感をサポートする上で、以下のような視点をもたらしてくれます。
- 完璧を求めすぎない姿勢: 幼少期からの経験を通じて、子育てには完璧な答えがなく、子どもも親も試行錯誤しながら成長していくものであることを理解しています。この理解は、子どもの失敗や課題に直面した際に、過度に心配したり、否定的に捉えたりすることなく、落ち着いて見守る力になります。
- 「できたこと」だけでなく「頑張ったプロセス」に目を向ける視点: 結果だけでなく、そこに至るまでの努力や工夫、粘り強さなど、目に見えにくいプロセスを評価することの重要性を知っています。学齢期の子どもにとって、努力そのものが認められることは、自己肯定感を育む上で非常に大切です。
- 子どものペースと個性を尊重する視点: 他の子どもとの比較ではなく、その子自身の成長の軌跡を捉えることの重要性を経験的に理解しています。子どもが持つユニークな才能や興味、得意なことを見つけ、それを伸ばせるような環境を整えることが、自己肯定感を育む土台となります。
- 親自身の失敗経験を語ることの価値: 親御さん自身が子どもの頃や大人になってからの失敗談、それをどう乗り越えてきたかを語ることは、子どもにとって大きな学びとなります。「完璧な人などいない」「失敗は次に繋がる機会」というメッセージは、子どもが自身の失敗を受け入れ、前向きに進む力になります。
具体的な関わり方のポイント
上記のような視点を持ちながら、日々の具体的な関わり方としては、以下のような点が考えられます。
- 子どもの話を「聴く」時間を設ける: 子どもが学校であったこと、友達との出来事、感じていることなどを話す機会を作り、評価やアドバイスをする前に、まずは共感的に耳を傾けます。子どもは話を聞いてもらうことで、「自分は受け入れられている」「自分の気持ちには価値がある」と感じることができます。
- 結果だけでなくプロセスや努力を具体的に承認する: テストの点数や競争の結果だけでなく、「あの問題、諦めずに粘り強く考えて解いたね」「発表の準備、大変だったと思うけど、最後までやり遂げたね」のように、具体的な行動や努力を言葉にして伝えます。
- 失敗や課題を乗り越える機会として捉え直す: 失敗した時に、「どうしてできなかったの」と問い詰めるのではなく、「ここから何を学べるかな」「次はどうすればもっとうまくいくかな」と、共に考える姿勢を見せます。失敗を恐れず挑戦できる意欲を育みます。
- 親自身の弱さや葛藤も見せる: いつも完璧な親であろうとするのではなく、「お母さん(お父さん)も、こういうことは苦手なんだ」「こんな失敗をしたことがあるよ」といった話をする中で、子どもは「失敗しても大丈夫なんだ」「親だって完璧じゃないんだ」と感じ、安心感を得ることができます。
経験の共有から生まれる気づき
学齢期の子育ては、子ども自身の内面がより複雑になり、親としてどのように関わるべきか悩む場面も増えるかと思います。こうした時、同じような経験を持つ他の親御さんの話を聞くことは、自身の経験を振り返り、新たな視点を得る貴重な機会となります。
「うちの子はこんな時に自信をなくすようですが、皆さんのお子さんはどうですか?」 「子どもが失敗をひどく気にするのですが、どんな声かけをされていますか?」
といった問いかけは、きっと多くの親御さんの心に響くことでしょう。ご自身の経験を共有したり、他の親御さんの工夫を知ったりする中で、目の前の子どもにどう寄り添うべきか、そのヒントが見つかるかもしれません。
学齢期の子どもの自己肯定感を育む旅は、決して平坦な道のりではありません。しかし、これまでの子育てで培われた経験と、同じように子育てと向き合う親御さんたちとの繋がりは、私たちに力を与えてくれるはずです。お子さんが、ありのままの自分を受け入れ、未来に向かって前向きに進んでいけるよう、共に温かく見守っていきましょう。