親子のきずな広場

学齢期の子どもがお手伝いを「自分ごと」にするには:親の経験を活かすアプローチ

Tags: お手伝い, 学齢期, 子育て, 自立, 家庭教育

学齢期に入り、子どもたちの成長と共に、家庭内での役割やお手伝いについて考える機会が増えていることと思います。お手伝いは単に家事を分担することだけでなく、子どもが家族の一員としての自覚を持ち、自立心や責任感を育む大切な機会であることは、多くの親御さんが感じていらっしゃることでしょう。

しかし、「言わないとやらない」「嫌がる」「どう促せば良いのか分からない」といった声も聞かれます。単に「やりなさい」と指示するだけでは、子どもがお手伝いを「自分ごと」として捉え、主体的に取り組むようになるのは難しいものです。学齢期という、自分自身や社会との関わりを深めていく時期に、子どもがお手伝いを前向きに捉えるようになるために、経験豊富な親だからこそ考えられるアプローチがあるのではないでしょうか。

なぜ学齢期にお手伝いが大切なのか

学齢期は、子どもが学校生活を通して社会のルールや他者との協調性を学ぶ時期です。家庭でのお手伝いは、その学びを実生活の中で実践する場となります。

こうした大切な学びの機会であるお手伝いを、子どもがどのように捉えるかは、親の関わり方によるところが大きいと言えるでしょう。

お手伝いを「自分ごと」にするためのアプローチ

では、どうすれば子どもがお手伝いを「やらされるもの」ではなく「自分ごと」として捉えるようになるのでしょうか。長年の子育て経験から見えてくる、いくつかの視点や工夫について考えてみます。

1. 「お手伝い」ではなく「家族の仕事」という視点

「お手伝い」という言葉には、「本来は親がやるべきことを手伝ってあげる」といったニュアンスが含まれることがあります。これを「家族みんなで分担する仕事」「家庭を維持するために必要なこと」という視点に変えて伝えることから始めてみてはいかがでしょうか。パパやママもそれぞれの「家族の仕事」を担っていることを伝え、子どもにも年齢に応じた「家族の仕事」をお願いする形にすることで、より主体性を引き出しやすくなるかもしれません。

2. 子ども自身に役割を選んでもらう機会を作る

一方的に「これをやりなさい」と指示するのではなく、いくつかのお手伝いの選択肢を提示し、「この中から、あなたがやってくれると助かるな」と子ども自身に選んでもらう機会を作ることは有効です。自分で選んだことには、より責任を持って取り組もうとする意識が働きやすいものです。ただし、選択肢が多すぎると迷ってしまうため、最初は2〜3個から始めるのが良いかもしれません。

3. なぜそのお手伝いが必要なのか、理由を具体的に伝える

「片付けなさい」「食器を運びなさい」といった指示だけでなく、「ここに〇〇が置いてあると、みんなが通る時に危ないから、ここに戻してくれると助かるな」「食事が終わった食器を運んでくれると、お片付けが早く終わってみんなでゆっくりできるね」のように、そのお手伝いがなぜ必要なのか、誰の役に立つのかを具体的に伝えることで、子どもは行動の意味を理解しやすくなります。

4. 結果だけでなく、プロセスや頑張りを認める声かけ

お手伝いの出来栄えに注目しがちですが、完璧にできていなくても、取り組んだプロセスや頑張りを認めることが重要です。「最後まで頑張ったね」「難しいのに挑戦したんだね」といった声かけは、子どもの意欲を維持するために大きな力となります。失敗してしまっても、「次はこうしてみようか」と次に繋がる声かけを心がけたいものです。

5. 完璧を目指さず、続けることを大切にする視点

学齢期の子どもにとって、毎日全てのお手伝いを完璧にこなすのは難しいかもしれません。今日はできなくても明日はできるかもしれない、といった長い目で見る視点が必要です。完璧を求めすぎず、たとえ少しずつでも続けることを大切にする姿勢が、子どもの「自分にはできる」という自信に繋がります。

6. 親も一緒に楽しむ、分担する姿勢を見せる

親自身がお手伝いを面倒なものとして捉えていると、その雰囲気は子どもにも伝わります。家族みんなで協力して家事をこなすことを、前向きな活動として捉え、時には親も一緒に楽しむような姿勢を見せることは、子どものモチベーションにも影響を与えます。また、パパとママがお手伝いを分担し、互いに感謝する姿を見せることも、子どもにとっては良い学びとなります。

7. ご褒美について考える

お手伝いに対してお小遣いや物品のご褒美を与えるかどうかは、各家庭の教育方針によって異なります。ご褒美は一時的に効果があることもありますが、内発的な動機づけ(やりがいや貢献感から自ら進んで行いたいと思う気持ち)を育む上では、注意が必要かもしれません。お手伝いの目的が「ご褒美をもらうこと」にならないよう、感謝の気持ちを伝えたり、家族の役に立つこと自体に価値があることを伝えたりすることが、長期的に見て大切なのではないでしょうか。

親自身の経験談の共有が持つ価値

これらのアプローチは、どれか一つだけを行えば解決するものではありません。子どもの性格や年齢、その時の状況によって、響く言葉や効果的な方法は変化します。様々な家庭で試行錯誤された経験談は、これからお手伝いについて子どもと向き合う親御さんや、今まさに壁にぶつかっている親御さんにとって、貴重なヒントや共感を得られる場となります。

「うちではこんな失敗があったけど、こうしたらうまくいくようになった」「うちはご褒美制を取り入れているけど、こんな工夫をしているよ」「特別なことはしていないけれど、感謝の気持ちを伝えることだけは意識している」といった、それぞれの家庭ならではのリアルな経験談を共有することには、大きな価値があります。完璧な親はいませんし、完璧な方法もありません。他の親の経験に触れることで、「うちもそれでいいんだ」「こういうやり方もあるのか」と肩の荷が下りたり、新たな試みに挑戦する勇気をもらえたりすることでしょう。

まとめ

学齢期の子どもがお手伝いを「自分ごと」として捉え、主体的に取り組むようになる過程は、一朝一夕に完成するものではありません。それは、子どもが家族との関わりの中で、自分の役割や責任を学び、自立への道を歩むための大切なステップです。

単なる指示や強制ではなく、子どもとの対話を通じて、お手伝いの意味を伝え、主体的な選択を促し、努力や貢献を認める関わり方が求められます。そして何より、親自身が完璧を求めすぎず、子どもと共に成長していく姿勢を持つことが大切です。

この「親子のきずな広場」が、学齢期の子どもとのお手伝いを巡る様々な経験を共有し、互いの試行錯誤から学び合う場となることを願っております。あなたの経験や考えが、きっと他の誰かの助けになるはずです。