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学齢期の子どものやる気をどう支えるか:経験豊富な親が考える内発的動機づけのヒント

Tags: 学齢期, 子育て, モチベーション, 内発的動機づけ, 親の関わり方

学齢期の子どもの「やる気」:経験豊富な親だからこそ感じる難しさ

お子様が学齢期に進むにつれて、子育てにおける課題も変化してきたと感じる方は多いのではないでしょうか。幼少期には外的な働きかけが効果的だった場面でも、学齢期になると子どもの内面、特に「やる気」や「モチベーション」が重要になってきます。

宿題に取り組む意欲、新しいことに挑戦する姿勢、困難に直面したときの粘り強さ。これらは全て「やる気」に繋がるものですが、親としてどうすれば子どもの内側から湧き出るやる気を支えられるのか、悩ましいと感じることもあるかもしれません。

長年子育てを経験されてきた皆様は、それぞれにお子様の「やる気」との向き合い方について試行錯誤されてきたことと思います。過去の経験を振り返り、今、学齢期の子どものやる気をどのように捉え、関わっていくのが良いのか、皆様と一緒に考えていきたいと思います。他のご家庭ではどのような工夫をされているのか、思いを馳せるきっかけとなれば幸いです。

外発的動機づけから内発的動機づけへ:学齢期の変化を理解する

子どもの「やる気」には、大きく分けて二つの種類があると言われています。一つは「褒められたい」「叱られたくない」「ご褒美が欲しい」といった、外部からの刺激や評価によって生まれる「外発的動機づけ」です。もう一つは、「面白いから知りたい」「楽しいからやりたい」「できるようになりたい」といった、自身の内側からの興味や関心、達成感によって生まれる「内発的動機づけ」です。

幼少期においては、外発的動機づけが行動のきっかけとして有効な場面が多くあります。しかし、学齢期になり思考力や自己認識が発達してくると、外的な報酬がないと行動しない、あるいはやらされているという感覚が強くなり、一時的な効果に留まることが増えてきます。

この時期に重要となるのが、内発的動機づけをいかに育むかという視点です。子ども自身が「やりたい」と感じ、その過程や結果に喜びや成長を見出すことが、持続的な学びや挑戦に繋がるからです。親の役割は、単に「やらせる」ことではなく、子どもが内側から「やりたい」と思えるような土壌を耕すことへと変化していくと言えるでしょう。

学齢期の子どもの内発的動機づけを支えるヒント

では、具体的に親としてどのような関わり方が、学齢期の子どもの内発的動機づけを支えることに繋がるのでしょうか。いくつかの視点から考えてみます。

1. 子どもの「自律性」を尊重する

自分で選び、自分で決めるという感覚は、内発的動機づけの重要な要素です。全てを子どもに委ねるのが難しい場合でも、例えば学習の進め方について複数の選択肢を提示する、週末の予定について意見を聞くなど、子どもが自分でコントロールできる範囲を意図的に設けることが有効です。親が一方的に指示するのではなく、「あなたはどうしたい?」と問いかける姿勢は、自律性を育む第一歩となります。過去に、お子様に小さな選択を任せてみて、予想外の成長が見られたという経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

2. 「有能感」を高めるサポートをする

「自分にはできる」という感覚、すなわち有能感は、新たな挑戦への意欲を掻き立てます。最初から高い目標を設定するのではなく、達成可能な小さなステップに分け、一つクリアするごとに承認する関わりが有効です。結果だけでなく、そこに至るまでの努力やプロセス、工夫した点を具体的に褒めることも大切です。「頑張ったね」だけでなく、「〇〇を諦めずに続けたのが偉かったね」「この問題を解くために、前に間違えたところを見直したんだね、素晴らしいね」といった具体的な言葉は、子どもに自身の成長を実感させます。失敗を経験したときに、「次はどうすればできるかな?」と一緒に考える姿勢も、困難から学ぶ力、つまり次の「やる気」に繋がります。

3. 親子の「関係性」を深める

子どもが安心感を持ち、自分の興味や考えを自由に表現できる親子関係は、内発的動機づけの基盤となります。お子様の好きなこと、関心があることに対して、頭ごなしに否定せず、一緒に探求したり、親自身も学んだりする姿勢を示すことは、子どもの探求心を刺激します。質の高い対話、すなわち、子どもの話を丁寧に聞き、感情に寄り添い、共に考える時間は、信頼関係を深め、「この人のためなら頑張りたい」「応援してくれているから挑戦してみよう」という気持ちを育むことに繋がります。

経験を活かし、完璧を目指さない視点

これまで子育てをされてきた中で、様々なアプローチを試され、成功も失敗も経験されてきたことと思います。学齢期の子どものやる気への関わり方もまた、一つの正解があるわけではありません。お子様の個性や発達段階、そのときの状況によって、効果的なアプローチは異なります。

過去にうまくいった経験は貴重なヒントになりますが、幼少期とは状況が変わっていることを理解し、柔軟に対応することが求められます。また、うまくいかなかった経験もまた、新たなアプローチを考える上での大切な学びとなります。

そして何より、親自身が完璧を目指しすぎないことも大切です。子どものやる気を常に満タンに保つことは現実的ではありませんし、無理なプレッシャーは逆効果になることもあります。親自身が子育てを楽しむ姿勢や、自身の仕事や趣味に打ち込む姿を見せることも、子どもにとっては良い刺激となる場合があります。親自身が内発的な動機づけを持って日々を過ごしている姿は、子どもにとって最も身近なロールモデルとなり得るからです。

学齢期の子どもの「やる気」は、外から与えるものではなく、内側から湧き出るものを丁寧に育んでいくイメージに近いかもしれません。それは一朝一夕にできることではなく、日々の関わりの中で少しずつ培われていくものです。

この記事が、皆様がお子様のやる気について改めて考え、これまでの経験を振り返り、そして他の親御様との情報交換を通じて新たなヒントを得るきっかけとなれば幸いです。