学齢期の子育てに活かす:親自身の得意・苦手との向き合い方
はじめに
学齢期の子育ては、子どもが自立への一歩を踏み出し、家庭外の世界との関わりを深めていく大切な時期です。この過程で、親御さんご自身のこれまでの経験や知識、あるいは得意なこと、苦手なことが、どのように子育てに影響を与えているかを感じる機会も増えるのではないでしょうか。長年子育てを経験されている皆様であれば、多かれ少なかれご自身の傾向に気づかれていることと存じます。
本稿では、学齢期の子育てにおいて、親自身の得意なこと・苦手なことをどのように認識し、それを子どもの成長のサポートにどう活かしていくか、あるいはどう向き合っていくかについて考えていきたいと思います。ご自身の経験と照らし合わせながら、読み進めていただけたら幸いです。
親自身の「得意」を子育てにどう活かすか
親御さんそれぞれが持つ「得意」なことは、学齢期の子育てにおいて貴重な財産となり得ます。例えば、特定の学習分野に詳しかったり、整理整頓が得意だったり、あるいは物事を計画的に進めるのが得意だったりといった特性です。
これらの得意なことを、子どもの学習サポートや生活習慣の確立、問題解決のヒントを与える際に活かすことは、子どもにとって大きな助けになるでしょう。例えば、算数が得意な親御さんが、子どもがつまずいている部分を理解し、分かりやすく説明してあげることで、子どもの苦手意識が軽減されるかもしれません。また、計画的に物事を進めるのが得意な親御さんであれば、子どもの長期休暇の学習計画や、日々の時間管理のサポートにおいて具体的なアドバイスができるでしょう。
しかし、ここで大切なのは、「親の得意」を子どもに押し付けたり、子どものペースを無視したりしないことです。親にとっては容易なことでも、子どもにとっては難しい場合があります。親の得意はあくまで「サポートの引き出し」の一つとして捉え、子どもの関心や理解度に合わせて提供することが重要です。親が楽しそうに自身の得意なことを子どもに伝える姿勢は、子どもが新たな興味を持つきっかけにもなり得ます。皆様はご自身の得意なことを、お子様との関わりの中でどのように活かされていますでしょうか。
親自身の「苦手」が子育てに与える影響
一方で、親自身が「苦手」と感じることも、学齢期の子育てにおいて意識しておく必要があります。例えば、特定の教科、人前で話すこと、感情を穏やかに保つこと、あるいは変化への対応などが苦手かもしれません。
親の苦手が、無意識のうちに子どもの可能性を狭めてしまったり、子どもにプレッシャーを与えてしまったりする可能性もゼロではありません。例えば、親自身が数学が苦手だと、「私も数学は苦手だったから、あなたも苦手でも仕方ない」といったメッセージを無意識に送ってしまうかもしれません。また、親が整理整頓が苦手な場合、家庭環境が整わず、子どもが集中して学習しにくい状況を生んでしまう可能性も考えられます。
自身の苦手な部分を認識することは、決して恥ずかしいことではありません。むしろ、その認識が、子どもとの関わり方を見直すための第一歩となります。自身の苦手が子どもの成長にどのように影響している可能性があるのか、一度立ち止まって考えてみることは有益でしょう。
親自身の苦手にどう向き合うか
では、親自身の苦手にどのように向き合えば良いのでしょうか。完璧な親である必要はありませんが、苦手な部分を認識し、それを補うためのいくつかの方法があります。
まず、自身の苦手なことを子どもにオープンに伝えてみるのも一つの方法です。「お母さんも絵を描くのは苦手だけど、頑張って描いてみるね」といった姿勢を見せることで、子どもは親の不完全さを受け入れ、自身が苦手なことにも挑戦する勇気を持つかもしれません。
次に、夫婦やパートナー、あるいは親族など、身近な人と協力して苦手な部分を補い合うことが考えられます。親の一方が特定の教科が得意であれば、その部分をサポートするなど、家庭内で役割分担をするのも有効です。
また、家庭外のリソースを活用することも大切です。学習塾や習い事の先生、地域のボランティア、あるいはオンライン上の信頼できる情報など、様々なサポートがあります。無理に親自身が苦手なことを全て担おうとするのではなく、専門家や外部の力を借りることで、子どもに適切なサポートを提供できます。
さらに、子ども自身の成長に目を向ける視点も重要です。親が苦手な分野でも、子どもが興味を持ち、得意になる可能性は十分にあります。子どもがデジタルデバイスの操作に詳しければ、親が使い方を学ぶ際に子どもに教えてもらうなど、親子で立場を入れ替えて学び合うことも可能です。親の苦手を受け入れつつ、子どもが自身の得意なことを伸ばせるような環境を整えることが大切です。他の親御さんは、ご自身の苦手な部分について、どのように工夫して子育てに取り組んでいらっしゃるのでしょうか。
自己理解と情報共有の価値
親自身の得意・苦手を認識するためには、自己内省が欠かせません。これまでの子育て経験を振り返り、自分がどのような状況で力を発揮し、どのような状況で困難を感じたのかを冷静に分析してみましょう。
そして、他の親御さんと情報や経験を共有することも、非常に価値のあることです。自分一人で悩んでいたことが、他の親御さんの経験談を聞くことで解決の糸口が見つかったり、自分の得意や苦手が客観的に見えたりすることがあります。「他の家庭ではどうしているのだろうか」という疑問は、多くの親御さんが抱えるものでしょう。このような場で多様な視点に触れることは、自身の特性を活かした子育ての方法を考える上で大きな助けとなります。
まとめ
学齢期の子育てにおいては、親御さんご自身の経験や知識に加え、得意なこと、苦手なことも重要な要素となります。ご自身の得意を謙虚に活かしつつ、苦手な部分は補う方法を考え、必要であれば外部のリソースも活用していく姿勢が、結果として子どもの健やかな成長をサポートすることに繋がります。
完璧な親を目指すのではなく、自身の特性を理解し、子どもと共に学び成長していく過程を大切にすることが何よりも重要です。この広場が、皆様が互いの経験から学び合い、ご自身の得意・苦手を子育てにどう活かすか、どう向き合うかを考える上での一助となれば幸いです。