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学齢期の子どものレジリエンスを育む:困難を乗り越える力を家庭でどう培うか

Tags: レジリエンス, 学齢期, 親の関わり方, 非認知能力

学齢期の子どものレジリエンスを育む:困難を乗り越える力を家庭でどう培うか

学齢期に入ると、子どもたちは家庭の外の世界と接する機会が増え、様々な課題に直面します。学習面でつまずいたり、友達との関係に悩んだり、習い事の練習が大変だと感じたり。親として、子どもがそうした困難にぶつかり、時に落ち込んでいる姿を見るのは、胸が痛むものです。同時に、これらの経験を通して子どもがどのように成長していくのか、どのように寄り添うべきか、試行錯誤されている親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか。

私自身も、我が子が小さな壁にぶつかる度に、かつて自分が子どもの頃はどうだったか、どう乗り越えてきたかなどを考えさせられてきました。この時期の子どもたちが、困難に立ち向かい、そこから立ち直る力を育むことは、将来にわたる大きな財産となります。今回は、この「困難を乗り越える力」、すなわちレジリエンスを家庭でどのように育んでいけるかについて、これまでの経験を振り返りながら考えてみたいと思います。

レジリエンスとは何か

「レジリエンス」という言葉を耳にされたことがあるかもしれません。これは一般的に、「逆境や困難、強いストレスに直面したときに、適応し、立ち直る精神力や能力」と説明されます。単に「折れない心」というよりも、「しなやかに回復する力」や「バネのように跳ね返す力」といったニュアンスが近いかもしれません。

学齢期の子どもにとって、このレジリエンスは非常に重要です。なぜなら、この時期は自己肯定感や自己効力感が育まれる大切な段階であり、様々な成功や失敗の経験を通して「自分はできる」「困難を乗り越えられる」という感覚を身につけていくからです。学校生活や集団行動の中で、自分の思い通りにならないことや、否定的な評価を受けることも出てくるでしょう。そうした経験から、子どもがどのように立ち直り、学びを得るかは、その後の成長に大きく影響します。

家庭でできるレジリエンスを育む関わり方

では、親は家庭でどのように子どもたちのレジリエンスをサポートできるのでしょうか。いくつか実践的な視点を共有させていただきます。

1. 失敗や困難を否定しない安全な環境を作る

子どもが何か新しいことに挑戦して失敗したり、壁にぶつかって落ち込んだりしたとき、まず大切なのは、家庭が彼らにとって「安全な場所」であると感じられることです。「ここでなら失敗してもいい」「つらい気持ちを素直に出してもいい」と思える環境があるかどうかが、立ち直りの第一歩になります。

失敗を責めたり、「だから言ったでしょう」と否定したりするのではなく、「大変だったね」「頑張ったね」と、結果ではなく、挑戦したプロセスやその時の感情に寄り添う姿勢が大切です。私自身、子どもがテストで思うような結果が出なかった時など、つい口出しそうになる衝動を抑え、「がんばったのに残念だったね」と気持ちを受け止めるように心がけてきました。親自身の過去の失敗談や、そこからどう学んだかを話して聞かせることも、子どもにとって「失敗は終わりではない」と感じるきっかけになることがあります。

2. 感情の言語化を促し、受け止める

子どもが落ち込んだり、怒ったり、悔しがったりしているとき、その感情をうまく言葉にできないことがあります。親が「今どんな気持ち?」「何が一番つらかった?」と優しく問いかけ、子どもが自分の感情を表現する手助けをすることは、感情を整理し、次にどうするかを考える上で役立ちます。

大切なのは、どんな感情であっても、それを否定せず、「そう感じたんだね」とそのまま受け止めることです。感情を抑え込むのではなく、適切に表現し、受け止めてもらう経験は、自己理解を深め、感情のコントロールにも繋がります。

3. 課題を乗り越えた経験を共に振り返る

レジリエンスは、「自分には乗り越える力がある」という自己肯定感や自己効力感に支えられます。過去に子どもが困難を乗り越えたり、目標を達成したりした経験を、親が一緒に振り返ることは有効です。

「あの時、〇〇が大変だったけど、△△したからできたんだよね」「初めて自転車に乗れた時、何度も転んだけど、諦めなかったから乗れるようになったんだよ」といったように、具体的なエピソードを挙げて、子ども自身の努力や工夫が結果に繋がったことを確認します。小さな成功体験の積み重ねが、「次もきっと大丈夫」という自信に繋がっていくのです。

4. プロセスを褒め、成長思考を育む

学齢期は、どうしても結果に注目しがちですが、レジリエンスを育む上では、結果に至るまでの「プロセス」や「努力」に焦点を当てることも重要です。「できた」「できなかった」という結果だけでなく、「一生懸命考えたね」「難しい問題に根気強く取り組んだね」「最後まで諦めずにがんばったね」といった、努力そのものや粘り強さを具体的に褒めるようにします。

これは、「固定思考(自分の能力は固定的だという考え方)」から「成長思考(努力次第で能力は伸びるという考え方)」への転換を促します。成長思考を持つ子どもは、失敗を「自分の能力が低いから」ではなく、「まだ努力が足りない、やり方を変えればできるようになる」と捉える傾向があり、これが粘り強く再挑戦する力に繋がります。

5. 問題解決のプロセスを共に考える

子どもが壁にぶつかったとき、親がすぐに解決策を与えたり、代わりにやってあげたりするのではなく、「どうしたらいいかな?」「他にどんな方法があると思う?」と一緒に考え、子ども自身に解決策を見つけさせるように促します。

親はあくまで「伴走者」として、問いかけやヒントを通じて思考をサポートします。子ども自身が考え、試行錯誤し、解決策を見出す経験こそが、問題解決能力とレジリエンスを高めます。たとえその方法が遠回りだったり、失敗に終わったりしても、自分で考えたという経験そのものが貴重な学びとなります。

6. 休息と自己ケアの重要性を伝える

レジリエンスは、常に「頑張り続ける」ことではありません。時には立ち止まり、休息し、心と体を立て直すこともレジリエンスの一部です。子どもたちが疲れていたり、どうしてもやる気が出なかったりする時には、「休むことも大切だよ」と伝え、心身のケアの仕方を教えることも重要です。

好きなことをする時間、友達と遊ぶ時間、何もせずぼーっとする時間など、自分にとって心地よい時間を持つことの価値を理解できるようにサポートします。

7. 親自身のレジリエンスを示す

子どもは親の姿をよく見ています。親自身が日常生活の中で、予期せぬ出来事や困難にどのように向き合い、乗り越えようとしているかを示すことも、子どもにとって生きた教材となります。完璧である必要はありません。親もつまずくことがあるけれど、どうやって立ち直ろうとしているのか、そのプロセスを見せることで、「困難は乗り越えられるものだ」というメッセージを伝えることができます。

まとめ:日々の積み重ねが力となる

レジリエンスは、特別な訓練によって身につくものではなく、日々の生活の中で、子どもが様々な経験を通して少しずつ育んでいく力です。成功だけでなく、失敗や困難な経験も、子どもがレジリエンスを育む貴重な機会となります。

親としてできることは、そうした経験の機会を奪うことなく、子どもが安心して挑戦でき、つまずいた時には立ち直れるような、心理的な安全基地となることです。結果だけでなくプロセスを認め、感情に寄り添い、共に考え、そして親自身の姿を通して示すこと。これらは、すぐに劇的な効果をもたらすものではないかもしれませんが、日々の穏やかな関わりの中で、子どもたちの心の幹を確かに育んでいくことでしょう。

他のご家庭では、お子さんが困難にぶつかった時、どのような言葉をかけたり、どのような関わり方をされていますでしょうか。親自身の経験を振り返り、他の親御さんと情報や考えを共有することも、私たち自身の学びとなり、子どもへのより良い寄り添い方を見つけるヒントになるかもしれません。


(この記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の方法を断定的に推奨するものではありません。子どもの成長や状況に合わせて、様々な考え方や専門家の意見も参考にされることをお勧めします。)