学齢期の子どもの失敗経験:挑戦への意欲とレジリエンスを育む親の伴走
学齢期の子どもの失敗経験にどう向き合うか:挑戦への意欲とレジリエンスを育む親の伴走
学齢期に入ると、子どもたちは家庭の外の世界で、より多くの挑戦に直面し、それに伴って失敗も経験する機会が増えてきます。テストでの点数、友達との小さな衝突、習い事での伸び悩み、目標達成の難しさなど、その形はさまざまです。親として、我が子の失敗を目の当たりにしたとき、どのように寄り添い、その経験を子どもの成長に繋げていくことができるでしょうか。
長年子育てを経験されてきた皆さまの中には、すでに様々な失敗と向き合い、乗り越えてこられた経験をお持ちの方も多いことでしょう。幼少期の失敗とはまた異なる、学齢期ならではの失敗に、私たちはどのように関わっていくべきか、共に考えていきたいと思います。
失敗は成長のための貴重な機会
私たちはつい、失敗を避けるべきもの、あるいはネガティブなものとして捉えがちです。しかし、学齢期の子どもたちにとって、失敗経験は非常に重要な意味を持ちます。
失敗から学ぶことで、子どもは物事が常に思い通りに進むわけではないことを知り、どうすれば次はうまくいくかを考える力を養います。これは、問題解決能力や批判的思考力を育む上で欠かせないプロセスです。また、失敗を乗り越え、再び立ち上がる経験は、レジリエンス(精神的な回復力)を高めます。困難に直面しても諦めずに粘り強く取り組む姿勢や、失敗から立ち直る力は、将来、子どもたちが社会で生きていく上で大きな財産となります。
さらに、失敗を恐れずに新しいことに挑戦する意欲は、子どもの世界を広げ、可能性を引き出す原動力となります。失敗をネガティブなものとして過度に恐れる環境では、子どもは安全な範囲でしか行動しなくなり、自ら学び、成長する機会を失ってしまうかもしれません。
学齢期の子どもの失敗にどう伴走するか
では、具体的に親はどのように子どもの失敗経験に寄り添えば良いのでしょうか。
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子どもの感情に寄り添い、受け止める
子どもが失敗したとき、まず大切なのは、その子が抱える感情を受け止めることです。残念な気持ち、悔しさ、恥ずかしさ、怒りなど、様々な感情があるでしょう。親が「そんなことで」「たいしたことない」と軽視したり、すぐに原因分析やアドバイスを始めたりするのではなく、「がんばったのに残念だったね」「悔しい気持ち、よく分かるよ」のように、まずは子どもの気持ちに共感的に耳を傾けることから始めます。親に自分の感情を受け止めてもらえる安心感が、子どもが失敗から立ち直るための基盤となります。
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失敗の原因を共に振り返る
感情が落ち着いた後で、客観的に失敗の原因を一緒に考えてみましょう。ただし、親が一方的に「あれが悪かった」「こうすべきだった」と断定するのではなく、「どうしてこうなったのかな?」「他に考えられることはあるかな?」と問いかけながら、子ども自身が状況を振り返り、要因を分析できるように促します。このプロセスを通じて、子どもは自分の行動や状況を客観的に見る目を養い、次に活かすための具体的なヒントを見つけ出します。
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結果だけでなく、挑戦やプロセスを評価する
失敗を経験した子どもは、結果が出なかったことに自信をなくしているかもしれません。そのようなときこそ、結果そのものではなく、挑戦したこと、努力したプロセス、そこから学んだこと自体を肯定的に評価することが重要です。「最後まで諦めずに取り組んだことはすごいことだよ」「今回の経験で、〇〇について新しい発見があったね」のように、努力や学びの価値を伝えることで、子どもは失敗をネガティブな終わりではなく、次のステップへの学びとして捉えることができるようになります。
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親自身の失敗談を共有する
経験豊富な親御さんの中には、ご自身の人生における失敗経験をお持ちの方も多いでしょう。完璧な人間は存在しないことを伝えるために、親自身が過去に失敗した経験や、そこから何を学んでどう乗り越えたかを話すことは、子どもにとって非常に勇気づけられることとなります。「お父さん(お母さん)も、昔こういう失敗をしたことがあるんだよ。その時はすごく落ち込んだけど、そこからこういうことに気づいて、次はこうしてみたんだ。」のように、人間は誰でも失敗するものであり、失敗から立ち直り、学ぶことができる存在なのだというメッセージを伝えることができます。
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挑戦そのものを応援する家庭の雰囲気
日頃から、結果の成否に関わらず、新しいことに挑戦すること自体を応援する家庭の雰囲気づくりも大切です。「やってみようか!」「もしうまくいかなくても大丈夫、そこから学べばいいんだよ」といった肯定的な声かけは、子どもが失敗を恐れずに一歩踏み出す勇気を後押しします。成功体験だけでなく、失敗から学び、粘り強く取り組むことの価値を伝えることで、子どもの中に健全な挑戦意欲とレジリエンスが育まれていきます。
経験を共有し、共に考える
学齢期の子どもの失敗経験への向き合い方は、家庭によって、また子どもの性格や失敗の内容によっても様々だと思います。どのような声かけが良いのか、どこまで介入すべきなのか、見守るべきなのか、悩むことも多いかもしれません。
他の親御さんは、お子さまのどのような失敗経験にどのように向き合われているのでしょうか。子どもが失敗から立ち直り、次の挑戦に向けて意欲を高めるために、どのような工夫をされているでしょうか。ぜひ、皆さまの貴重な経験や視点を共有していただけたらと思います。
失敗は、子どもが自らを深く知り、世界を学び、たくましく生きていくための大切な経験です。親としてその過程に寄り添い、伴走することが、子どものレジリエンスと挑戦への意欲を育むことに繋がっていくのではないでしょうか。