学齢期から考える子どもの経済的自立:親が伝えたいお金と社会のつながり
学齢期から考える子どもの経済的自立:親が伝えたいお金と社会のつながり
お子様が学齢期を迎え、日々の成長と共に社会との接点も増えてきているかと存じます。幼少期の手のかかる時期を乗り越えられた今、お子様の将来の自立について、より具体的な視点から考え始める方もいらっしゃるのではないでしょうか。その中でも、「経済的な自立」は、子どもたちが社会の一員として生きていく上で避けては通れない重要なテーマです。
私たち親世代は、経済の大きな変化を経験してきました。高度成長期からバブル崩壊、そして長期の停滞を経て、現代はグローバル化や技術革新による変化が目まぐるしい時代です。このような社会をこれから生きていく子どもたちにとって、単に貯金ができる、お小遣いを管理できるといったレベルに留まらない、より広い視野で「お金」と「社会」の関係性を理解することが、経済的な自立に向けた確かな土台となります。
この記事では、学齢期という時期に、親がどのように子どもにお金と社会のつながりを伝え、将来の経済的自立に向けた意識を育んでいくかについて、経験豊富な親御様だからこそ共有できる視点を交えながら考えてまいります。
なぜ学齢期に「経済的自立」と「社会のつながり」を考えるか
学齢期は、子どもたちの認知能力や社会性が大きく発達する時期です。抽象的な思考も可能になり、家族や学校だけでなく、より広い社会の仕組みにも関心を持ち始めます。この時期に「お金」を単なる交換ツールとしてだけでなく、社会が回る仕組みの一部であること、そして自分自身の将来の選択肢に関わる大切な要素であることを伝えることは、その後の人生における経済的な判断力や価値観の形成に大きな影響を与えます。
また、この年代の子どもたちは、親や周囲の大人の価値観や行動をよく観察しています。親自身がお金や仕事、社会に対してどのような価値観を持っているか、どのように向き合っているかを語ることは、子どもにとって最も身近で信頼できる学びの機会となります。経験豊富な親御様であれば、ご自身の成功談だけでなく、失敗談や試行錯誤の過程も含めて話すことで、より実践的で深い学びを促すことができるでしょう。
学齢期の子どもにお金と社会のつながりを伝える具体的なヒント
では、具体的にどのように子どもにお金と社会のつながりを伝えていけば良いのでしょうか。いくつかの視点をご紹介します。
1. お小遣い制のその先を考える
多くのご家庭でお小遣い制を取り入れているかと存じます。単に毎月決まった額を渡すだけでなく、お小遣いを「どのように使うか」だけでなく、「どのように貯めるか」「何のために計画するか」といった視点を加えることから始められます。
例えば、少し大きめの目標(ゲームソフトを買う、家族旅行で好きなお土産を買うなど)を設定し、そこに向けて逆算して貯金する計画を立てることを一緒に考えるのはどうでしょうか。目標達成の喜びは、将来の大きな目標に向けて計画的に努力することの小さな成功体験となります。また、目標達成のために「我慢する」「優先順位をつける」といった経験は、自己管理能力の向上にもつながります。
2. 身近な経済活動から社会の仕組みを学ぶ
日常の中に、お金と社会のつながりを見出す機会はたくさんあります。
- 買い物: スーパーで商品の値段を比較する、欲しいものが複数ある場合にどれを選ぶか理由を話し合う、消費税について話す。
- 家庭内のこと: 光熱費の明細を見ながら、電気やガスがどのように家庭に供給されているのか、使う量を減らすとどうなるのかを話す。水道代や食費についても同様です。
- 家族旅行: 家族旅行の予算を共有し、移動費、宿泊費、食費など、何にどのくらいお金がかかるのかを一緒に考える。子ども自身に観光スポットの入場料などを調べてもらうのも良い経験です。
- お店や会社: 近所のパン屋さんやレストランは、材料を仕入れ、人件費を払い、家賃を払って運営されていること。商品やサービスを提供することで利益を得ていること。シンプルなビジネスモデルを身近な例から説明してみるのはいかがでしょうか。
これらの経験を通じて、お金が「モノやサービスと交換するためのツール」であり、それは「社会の様々な活動によって生み出されている」という感覚を育むことができます。
3. 「働くこと」と「お金」の関連を意識する
学齢期の子どもにとって、「働く」ことはまだ遠い未来のことかもしれません。しかし、親自身や周囲の大人が「働く」ことで収入を得て生活していることを伝えることは、経済的な自立を考える上で欠かせません。
お手伝いと報酬を結びつけるかどうかは各家庭の考え方があるかと思います。しかし、お手伝いを「家族の一員としての役割」として捉えつつ、もしお小遣いとは別に特別な報酬を与える場合は、それは「労働の対価」であるということを明確に伝えても良いでしょう。
親自身の仕事について、どのような内容で、それが社会でどのような役割を果たしているのかを、子どもの理解力に合わせて話すことも大切です。仕事が単にお金を稼ぐ手段だけでなく、社会貢献や自己実現の側面もあることを伝えられれば、働くことへの前向きなイメージを育むことにもつながります。
4. 税金や公共サービスについて話す
子どもたちが直接的に税金を納めるのは将来のことですが、税金がどのように使われているかを知ることは、社会の一員としての意識を育む上で重要です。
例えば、通っている学校、公園、道路、図書館といった身近な公共サービスが、税金によって支えられていることを話します。それは、お金が単に個人のためだけでなく、社会全体のために使われる側面もあることを理解するきっかけとなります。地域のイベントや公共施設の利用など、具体的な例を挙げて説明すると分かりやすいでしょう。
5. 親自身の経験を語る価値
経験豊富な親御様には、これまでの人生で培ってきたお金に関する様々な経験があるかと存じます。それは成功体験だけでなく、失敗談や後悔、あるいは経済的な困難を乗り越えた経験かもしれません。
お子様が思春期を迎える前に、親自身のリアルな経験談を共有することは、子どもにとって非常に価値のある学びとなります。計画通りにいかなかった貯金、衝動買いをして後悔した経験、あるいは初めて大きな買い物をした時のことなど、飾らない言葉で語り聞かせることで、お金との付き合い方について、教科書には載っていない生きた知恵として伝わる可能性があります。
ご自身のキャリアパスについて話す中で、どのようなスキルが求められ、それが収入にどう繋がるのかといった話をすることも、働くことと経済の関係を理解する助けとなります。
まとめにかえて
学齢期の子どもに経済的自立について教えることは、単なる金銭教育に留まらず、社会との関わり方や将来を主体的に生きる力を育むことにつながります。それは一度に全てを教え込むものではなく、日々の生活の中での対話や経験を通じて、少しずつ深めていくプロセスです。
お子様にとって何より大切なのは、親がお金や働くこと、社会に対して真剣に向き合っている姿勢を見せること、そして、お子様自身の疑問や考えに寄り添い、一緒に考えていくことです。
この記事でご紹介したヒントが、皆様のご家庭での対話のきっかけとなれば幸いです。学齢期の子育てにおいては、他のご家庭がどのような工夫をされているのか、どのような点で悩んでいるのかを知ることも、自身の経験を振り返り、新たな視点を得ることに繋がります。もしよろしければ、皆様のご経験や実践されていることを共有してみてはいかがでしょうか。